受診のめやす
「身長が低い」「身長の伸びが悪い」、と感じられた時が受診のタイミングだと思います。そのうち伸びるだろう(少し不安だけど)、と考えていらっしゃる方が多いですが、もちろんあとからしっかり伸びればよいのですが、残念ながらそうならないこともあります。もっと早かったら治療できたかもしれないのに、と思うこともあります。
次項の低身長の基準に当てはまらなくても、身長の相談は遠慮なく受診なさってください。
風邪などの一般外来とは別の枠で診察させてもらっています。電話で予約をお願いします。
低身長とは
同じ性別、同じ誕生日のお子さん100人が背の順に並んだ時、前からだいたい2~3人目までが低身長と判断されます。低身長の目やすは-2SDという基準がありますが、その数値に惑わされて、受診が遅くなってしまうケースが増えています。
身長の伸びには、さまざまな要素が関係するため、低身長の原因もさまざまあります。身長のことで気になることがあればご相談に乗らせていただきます。
もう少し詳しく確認したい方は、ボタンをクリック(*別ウィンドウで製薬会社の成長相談室が開きます。)
学校と医療機関の評価の違い
学校ではパーセントタイルという基準を用いて低身長を評価していますので、100人中3人が低身長になります。
しかし、医療機関ではSDS(Zスコア)という基準で判断しますので、100人中約2.3人が低身長になります。その結果、学校で低身長と言われたけれど、受診するとギリギリ低身長ではないということもあります。学校でスクリーニング(ふるいにかける)をしているわけですが、見落としをなくすためですので、ご理解ください。
受診するときは
まず、身長や体重の記録をできるだけ集めてください、学校では年3回の身長測定がありますし、保育園では毎月測られるところもあります。母子手帳と保育園・幼園・学校の身長体重の記録など、 測定年月日と身長体重が数字でわかるものをできるだけ多く持参してください。成長曲線を作成し、記録はすべてお返しします。 小学生・中学生の方は担任の先生もしくは養護教諭(保健室の先生)にお願いしていただければ記録を受け取ることができます。 十分にお話を伺うために、予約制をとらせていただいています。お電話(TEL0773-25-0055)にて予約をお願いします。ご家族のだいたいの身長もお聞きしますので、確認をお願いします。
最近は、学校健診では、成長曲線を利用して受診を推奨するか、コンピューターが計算して決めています、学校から受診を勧められた場合、一定の基準を満たしていると思いますので、受診を強くお勧めします。
低身長の落とし穴:思春期
思春期の開始時期も身長を決める重要な要素です。
「今、小がらでも、思春期(第二次性徴)になればどんどん身長が伸びて大きくなる」と考えている親御さんや医師もいます。 しかし、すべての子どもが同じように伸びるわけではありません。例えば、男子で125cmの時に思春期が始まれば、一般的に大人になった時の身長は150~155cmです。 しかも早く思春期が来た場合は、低身長が目立ちませんので。病院を受診されることは少ないのです。
お子さんの思春期の時期を正確に判断するには成長曲線をつけることと、診察や検査が必要です。 低身長でも成長ホルモンの治療対象にならない場合も多いですが、成長曲線を付けながら経過を見ることが重要です。 成長曲線の傾きが上に傾いてきたところが、二次性徴の始まりです。それに加え、女の子であれば乳房がふくらみはじめ、男の子であれば精巣が大きくなってきていれば、思春期に入ったと判断できます。
他のお子さんより早めに思春期に入ったかもと不安がある場合は、ぜひ一度受診されることをお勧めします。
低身長の検査
成長曲線などから、低身長あるいは、身長の伸びが悪いと判断した場合は、検査を行います。
手のレントゲン:骨年齢(体の年齢)を知るため
血液検査:成長因子(IGF-1)、甲状腺ホルモンなどを調べたり、染色体の検査をすることもあります。
尿検査をすることもあります。
その結果、<1年間の成長率が下がっている><成長曲線の基準線から外れてきている><IGF-1や検査結果低い>など、さらに検査が必要な場合には、負荷試験(成長ホルモン分泌刺激試験)を行うことがあります。負荷試験は当院で実施しています。場合によってMRI検査など特殊な検査が必要な場合は、ご希望の病院に紹介して、撮影していただくことになります。
成長ホルモン分泌負荷試験
負荷試験は、当院で実施しています。アルギニン負荷試験・クロニジン負荷試験・L-Dopa負荷試験などから選んで行います。朝、絶食で来ていただき、特に問題なく検査が進めば、午前中に帰宅できます。入院せず検査ができますので様々な負担も少なくできると思います。
負荷試験をするかどうかは、受診され、上記の検査を行った後に決まりますので、その際に詳しく説明させていただきます。
低身長の治療
先に書いたように、身長が低くなる理由は人によってさまざまです。その対応はひとりひとりの方の体質によっても、受診時の年齢によっても違ってきます。
成長ホルモン分泌不全・ターナー症候群・SGA性低身長などでは、成長期に入る前の早い時期から成長ホルモンの注射をすることによって、大人になった時の身長を改善することができます。
栄養の偏りが、身長の伸びを悪くしていることがあります。その場合は適切な栄養分を摂取することで、身長の伸びが期待できることもあります。
思春期が平均よりも遅くくる体質(思春期遅発症)では、蛋白同化ホルモンという内服薬を処方することもあります。
自費治療について
身長の低い人に上記のような検査・治療を行っていますが、成長ホルモン治療の対象になるかたは多くはありません。それでも、なんとか身長を伸ばしたいという相談を受けることもあります。
男性では成長期に入った段階で、①骨が成熟するのを遅らせる治療(性腺抑制療法といいます)と、②男性ホルモンに似た作用を持つ内服薬(蛋白同化ホルモン)を併用することによって最終身長を改善することが期待できます(この治療は、一部の患者さんを除き健康保険が認められておらず自費診療となります)。それに加えて、③成長ホルモンの自己注射を使用することもあります。また②の蛋白同化ホルモンだけでも、ある程度伸びることがありますので、患者さんの状況により、選択させていただいております。
身体が成熟していない早い年齢から開始するほど効果が期待できるため、早期の受診をおすすめします。
しかし、女性では、②の薬は使えないため、まずは骨成熟を遅らせる薬を用い、場合によって成長ホルモン注射を併用するという選択肢が考えられますが、自己負担での成長ホルモン注射は、かなり高額な費用がかかります。
お子さまの状態によっては、保険治療ができるばあいもあります。成長相談室の中の、「思春期のこと」も参考になさってください。